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Focus
2017/09/08

もしも自動運転車が事故ったら

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2016年5月7日、アメリカのテスラモーターズ社の自動運転機能搭載車「モデルS」が事故を起こし、ドライバーが死亡しました。テスラジャパンによると、死亡事故が起きたモデルSの自動運転機能は、レベル2(アクセル・ハンドル・ブレーキのうち複数の操作をシステムが自動で行う)に該当し、レベル4(アクセル・ハンドル・ブレーキのすべての操作を完全に自動で行い、ドライバーは全く関知しない)の自動運転車ではありませんでした。
では、もし自動運転車が事故を起こした場合、誰が被害者への法的責任を負うことになるのでしょうか?

■自動運転レベル1~3の場合
レベル1~3の場合には、多少なりともドライバーが運転操作のプロセスに関与していますので、事故発生の責任はドライバーと自動車メーカーにあると考えられます。
■自動運転レベル4の場合
レベル4ではドライバー(正確には、「drive=運転」はしていませんが)が運転操作に関与しないため、加害自動車のドライバーは運転責任ではなく、自動運転システムの作動やメンテナンスに対する過失責任を負うことになります。被害者が加害自動車に法的責任を求めるには、立証責任を負う被害者側がドライバー、自動車メーカー、ソフトウェアメーカー、ビッグデータ管理者等、様々な関係者の過失責任を明らかにする必要がありますので、被害者はこれまで以上に膨大な時間と様々な負担を強いられることになります。

どこに欠陥があったのか、誰に過失があったのかを特定するよりも、まずは被害者を救済しなければなりません。自動運転システムの欠陥・障害、ハッキング等による事故発生が想定される中で、迅速に被害者を救済するため、自動車メーカーやソフトウェアメーカー等が共同で新しい損害保険を創設することが求められています。
このような環境の下、いくつかの大手保険会社は、被害者救済費用を補償する特約を相次いで新設しています。
また、現在国土交通省では「自動車運転における損害賠償責任に関する研究会」を立ち上げ、自賠法の損害賠償責任の課題について、迅速な被害者救済の確保、関係行政機関における制度面の取組み等に留意して検討を行っています。

法的整備等の超えなければならないハードルはあるものの、交通事故発生原因の大半は運転手自身の人為ミスですから、今後自動運転機能が進むにつれ、交通事故も大幅に減少することが期待できます。私事で恐縮ですが、筆者も先日自損事故を起こし車を買い替えることになりました。もちろん既に実用化段階にあるレベル2の自動運転車に買い替えたのは言うまでもありません。