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2018/07/26

ワイヤレス電力伝送(WPT)

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近年、家電機器や電力インフラ機器などに「ワイヤレスで給電や充電を行う技術」への注目が高まっています。例えば、ロボット、EV自動車、医療機器などに対するワイヤレス電力伝送の研究実用化が進められています。

「ワイヤレス電力伝送(wireless power transfer)」とは、電気的な接触なしに他の場所に電力を送る技術を指し、「ワイヤレス給電」「ワイヤレス充電」「非接触電力伝送」などとも呼ばれます。
ワイヤレス電力伝送には、技術によって様々な方式があります。非放射型は充電器と対象端末との距離が接触または近接し、放射型はその距離が非放射型と比べ長くなります。

 

ワイヤレス電力伝送の歴史は比較的古く、電動歯ブラシ、スマホ、EV自動車などへの充電・給電には、電波を送る距離が非常に短い非放射型の近接方式が既に普及しています。

この方式の代表は、2017年9月にApple社が発表した新型iPhone(iPhone 8、iPhone 8 Plus、iPhone X)に導入されたワイヤレス充電で、大電力化・効率化が可能である半面、有線の充電器と近接する必要があるため「充電しながらは使えない」という特徴があります。

一方、放射型の「マイクロ波方式」はアンテナを用い、電波の送受電により電力伝送するため、効率は低いものの長距離電力伝送に有効で、あらゆるモノが通信を介してネットワークに接続されるIOT社会を支える次世代のインフラ技術として、今後の実用化が期待されています。
この方式は、スマートホンやロボットの電動化・自動化・コネクテッド化とも親和性が高く、有線で充電する制約から解放され、「充電しながらも使える」という特徴があります。将来的には災害時の遠隔地への大電力送電や、飛行するドローンでの充電・給電などへの期待も高まっています。

総務省はマイクロ波方式ワイヤレス電力伝送の実用化に向け、制度の検討に着手しており、2020年度に世界初の実用化を目指しています。電波を遠くに飛ばす長距離型(数メートル~数キロメートル)であるため、通信や放送と同様に電波法や省令による規制をかける方針のようです。
通信や放送の電波より強い出力で飛ばすため、今後は他システムとの共用や人体への安全性を考慮した技術基準を設定するなど、安心・安全で効率的な運用に向けたルール作りが課題となりますが、電力も情報と同じように誰もがいつでも簡単に扱えるユビキタス時代に相応しい、新しいワイヤレス電力社会の実現が待たれています。