IoT時代の無線通信システム(LPWA)

「LPWA(Low Power, Wide Area:省電力広域無線ネットワーク)」は、少ない消費電力で半径数キロ~数十キロという広い範囲の通信が可能な無線通信技術のことです。通信量が比較的少なく、消費電力を抑えることが求められるIoT(Internet of Things/モノのインターネット)での利用が期待されています。
低消費電力の無線ネットワークにはBluetoothなどがありますが、これらは電波を遠くまで飛ばすことはできないため、広域で使用するためには多数の中継器を設置する必要があり、IoT用途には向きません。また、広域をカバーできる携帯電話ネットワーク(3G/4G)では、1回線あたり月々数百円の通信料金がかかることに加えて、モノに組み込む通信モジュールも高額になり、消費電力も大きいことから、これもまたIoT用途には不向きと言えます。
こうした課題を解決する通信手段として登場したのがLPWAです。通信速度は100bps~数十kbps程度であり、携帯電話ネットワークの3G(下り最大14.4Mbps/上り最大5.76Mbps)/4G(下り最大150Mbps/上り最大50Mbps)と比較すると通信速度は桁違いに遅いですが、圧倒的な低消費電力で広域での通信を可能にし、通信モジュールも低価格であることからも、IoTで利用できる無線ネットワークとして注目されています。
出典 総務省「LPWAに関する無線システムの動向について」(平成30年)
LPWAの主な方式として、「SIGFOX」「LoRa」「LTE-M/NB-IoT」などが挙げられます。
●SIGFOXは、フランスのIoT通信事業者であるSIGFOX社が開発した、低価格・省電力・長距離伝送を特長としたIoT向け通信ネットワークです。2018年1月時点では世界51カ国で提供されています。
●LoRaは米国半導体大手セムテックが開発し“LoRaAlliance”で仕様化されたオープンな通信規格です。2018年1月時点で67の通信事業者がLoRaの展開を発表しました。世界100ヶ国以上、300ヶ所以上で実証・運用が進められています。
●セルラーLPWA(LTE-M/NB-IoT)は、通信事業者が既に保有している4Gの基地局をそのまま利用できることから、携帯電話事業者が積極的に取り組んでおり、早期に全国規模をカバーできると期待されています。これまでの4G回線の基地局をそのまま使えることから、通信品質や災害時の対応などでも安心感が高い、双方向通信が可能、速度が比較的速い、LoRaのようにゲートウェイを設置する必要がない、といったメリットがあります。
世界的に見て、すでにサービスが始まっているのは非セルラー系LPWAネットワークのSIGFOX およびLoRaで、セルラーLPWAネットワークはそれらを追う形になっています。しかし、今後の本命は全国規模のエリアカバレッジと通信品質に強みを持つセルラーLPWAであると言われています。携帯大手3社は、セルラーLPWAの1つである「LTE-M」方式の通信サービスの提供を2018年春から順次開始しました。
LPWAをベースにIoTが普及するにつれて、サービスとしての作り込みが進んでいくものと期待されています。あらゆるモノが通信機能を持つのが当たり前の世界は、すぐそこまで来ているのかもしれません。