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Focus
2014/02/18

GPSと相対性理論

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今回は通信という世界を少し広げてGPSに焦点を当ててみたいと思います。
最近は多くの車にカーナビが搭載されています。このカーナビにより、かえって道を覚えなくなった人も多いのではないでしょうか。文明とは非常に便利なもの ですが、その原理を知っている人は意外に少ないという事にハタと気付きます。高精細な地デジの原理、液晶パネルで鮮やかな黒色を映し出す原理…。GPSも 御多分に漏れず、ある原理に従って位置を把握するわけです。

古来一般的に距離を測る方法として三角測量が知られていました。しかしGPSの原理はまったくちがいます。GPSは光の速度で伝播する電波の速度が秒速 30万キロで一定だという前提で動作しています。上空の人工衛星から発せられた電波を受信したカーナビは、まずその衛星が何という衛星でどういう周回軌道 を回っているか、つまりいまどこにいるかを軌道計算から把握します。その衛星から届く電波には正確な時刻が盛り込まれています。かりにその衛星が高度3万 キロにいたとするとカーナビには0.1秒で届くことになります。この0.1秒かかったという事実を知るにはカーナビに精度の高い時計を持っていればわかり ます。そうするとカーナビは衛星の場所と衛星からの距離が分かることになります。しかしこの「解」は衛星を中心とした球面になり答えは無限になってしまい ます。ここで人工衛星がもう一つあったとします。すると同じ理屈から、その衛星を中心とした別の球面が出来上がり、2つの球面を合わせた共通解はフラフー プの輪のようになり、カーナビを搭載した自動車はこの輪のどこかに存在することになります。でも輪なので答えはまだ無限です。さらに人工衛星がもう一つ あったらどうでしょうか。その衛星を中心とした別の球面が出来上がり、フラフープの輪との共通解は点が2つ(幸運な場合は1つ)できます。4つ目の人工衛 星で解は、ようややく1つになり自分の位置がズバリと特定できるようになります。

ここまでが幾何学的な話でしたが、じつは話はもっと複雑になります。人工衛星は高速で地球の周りを飛んでおり積んでいる時計は特殊相対性理論により遅れて きます。一方、人工衛星は地球のはるか上空にいるために地球重力の影響が弱まり一般相対性理論により積んでいる時計は進んできます。昔のカーナビはこれら を考慮しなかったため精度が悪かったのですが最新のカーナビは両方の相対性理論を考慮し補正しているため精度は向上しているようです。SFの世界の相対性 理論が最も身近なところで役立っているというお話でした。