「押す」と「引く」

いまや電気を使って情報のやりとりをする事が生活に定着し、それが常識となりました。まさに文明の利器です。テレビも携帯電話もみな電気を使って動いてい ます。いやいや我が家は「光ケーブル」だ、という方も、最終段階で光信号をダイオードによって電気に変えています。この、大げさに言えば情報をやり取りす る原理は、大きくプッシュ方式とプル方式に分かれます。
プッシュ方式というのはまさに情報を「押し出す」方式で、モールス信号をはじめトランシーバーなど元来これが基本でした。家庭の固定電話も、こちらから電 話することにより相手の電話機のベルを鳴らす信号が押し出されます。当たり前と言えば当たり前で、ほとんどがこの方式です。テレビも電波塔から映像を押し 出しています。「d」ボタンを押して地域の天気予報を見るのも、一見引き出しているように見えますが、家庭から東京スカイツリーにリクエスト電波を出して 引き抜いている(プル)訳ではなく、電波塔が送信している全国の天気予報の中から自分の地域のものをテレビ自身が選び出して表示しているだけです。
一方、プル型で通信を行っているのはパソコンメール(POPメールなど)です。これは自分の方から「私にメールが来ていませんか」とサーバに問合せ、あっ たらそれをサーバから自分のパソコンに引きずりおろすという原理です。いつでも見たい映画を頭から再生するという、オンデマンドサービスもプル方式です。 また、ホームページを閲覧するのも、インターネットの海から自分の望むページを引き出すものです。もともとインターネットの世界はプル方式がベースになっ ており、これが各種柔軟なテクノロジーを生み出す土壌になっていると言えます。
われわれ人間社会も、最近では「この営業局面はプッシュかプルか」という議論が飛び交うようになりましたが、身の回りの物事をプッシュかブルかという観点で見るのも面白いかも知れませんね。